労務管理に役立つ知識#73『傷病手当金申請』入社直後傷病休職と退職日以降の継続給付について(私傷病・休職・傷病手当金)
2022/11/23
傷病休職の考え方は会社に依存します。
法律上”休職”について明確な定めはなく、会社がルールとして傷病休職について就業規則に定めのある場合はこれに従い休職させることができ、定めがない場合は当然に休職することはできません。よって、会社により制度のあり・なしや、休職期間の長短、手当の有無など、違いがあることに留意しておく必要があります。
今回は、傷病休職制度が存在するという前提でお話させて頂きます。
傷病休職に入る場合、会社は一般的にその間の賃金支払い義務を負いません。これはノーワークノーペイの原則といい、労働をしていないのだから当然に労働の対価として賃金を支払う義務はない、という合理のうえに成立しています。では社員はこれからどっやって生計を立てていけばよいのでしょう。そこで、最低限の生活を保護するという目的で、健康保険加入者には、健康保険法から傷病手当金を受給することができます。
さて、ここで問題です。
入社間もない社員(健康保険に加入済)が、職場になじめず”適用障害”になり、会社が休職を命じました。この者は傷病手当金の受給対象になるでしょうか。
正解は、「対象」になります。
※ただし、連続した3日間(休日・有休を含む。)を私傷病のため欠勤する必要があります。
健康保険組合では現況調査として、直近1年間の加入状況を調べられることもありますが、これは保険給付をするうえで、組合側が標準報酬月額を明らかにしたいだけであって、受給の可否のために求めているものではありません。
一方、退職日以降に継続して傷病手当金を受給する場合には、3つの条件を満たす必要があります。
1.退職日に出勤していないこと
2.退職日で傷病手当金を受給できる状態であること
3.被保険者期間が1年以上あること
実務上、この”3”が満たせない者が多いと感じています。現職で被保険者期間が1年以上ない場合は、前職以前の被保険者期間(健康保険組合可、国保・共済・任継不可)も通算できるのですが、「それぞれの期間において、被保険者期間に1日の空白を空けてはならない」という決まりがあります。
例えば休職期間が3か月と短い会社で、その期間内で傷病が治癒できなかった、すなわち復職できなかったときは、休職期間満了日をもって自然退職となるケースが一般的です。人事としては至極当然なことなのですが、当の本人は理解されていないことが多いため、是非とも休職に入る際に、丁寧な説明を心掛けてみてください。必要に応じて、休職制度の制定、内容のブラッシュアップをご検討頂けますと幸いです。