労務管理に役立つ知識#62 『兼業・副業ガイドライン』残業時間のカウント方法(渋谷・社労士・顧問・労務相談・兼業・副業・時間外労働)
2022/09/24
兼業・副業ガイドラインはもうご存知ですね?
今後企業は原則、従業員の兼業・副業を認めなければなりません。
認めるうえで問題なのが労働時間の管理、即ち、残業が発生した場合の割増賃金は、自社が払うのか副業先が払うのか、非常に気になるところだと思います。
ガイドラインを読んでも何のこっちゃわからない。。。
ということで、本日は労働時間の通算方法を噛み砕いて説明したいと思います。
ガイドラインは難しく書き過ぎていると感じます。
考え方は至ってシンプルです。
大きなルールは2つだけです。
※ルール1→2の順で考えます。
ルール1.所定労働時間は、雇用契約の締結順に通算する。
例えば、A社と締結した後にB社と締結した場合、かつ、それぞれの契約上の所定労働時間がA社が8時間、B社が3時間とした場合、その日の所定労働時間は通算して11時間になります。即ち、B社の3時間分は契約上の所定労働時間にもかかわらず、1日8時間の法定労働時間を超えていますので、その3時間は、時間外労働としてB社が割増賃金の支払い義務を負うことになります。
ルール2.所定外労働時間は、1日を通じて早く開始した方から順番に通算する。
例えば、C社とD社と以下の契約を締結したとします。
C社:先に契約、所定労働時間18:00-21:00まで3時間労働、1時間残業
D社:後に契約、所定労働時間09:00-12:00まで4時間労働、1時間残業
→結局この日は、D社で9:00-13:00まで働いた後に、C社で18:00-22:00まで計9時間労働したことになります。
この場合の労働時間を見ていきます。
まずはルール1に当てはめます。契約順に所定労働時間を通算しますのでC社3時間+D社4時間⁼7時間です。
法定労働時間内に収まっており、双方割増賃金の支払いはありません。
次にルール2に当てはめます。所定外労働時間は1日を通じ早く開始した方から見ていきますので、D社の1時間を先に所定労働時間に通算します。これで8時間になります。まだ法定労働時間内のため、この1時間は通常の賃金を支払えばOKです。一方で次にC社の1時間を通算をするのですが、9時間になりますよね。よって、法定労働時間を超えるわけですから、D社はこの1時間分の割増賃金を支払う義務を負うことになります。
いかがでしょうか。
上記ルールは1日単位で見ましたが、週単位でも考え方は同じです。
例えば日曜を起算日として1週間あります。先に居酒屋で日曜日のみ所定労働時間8時間労働の者を平日8時間勤務の企業が雇用した場合、どうなるでしょうか。木曜日の時点で週40時間の法定労働時間を満たしますので、金曜日の8時間分はすべて割増賃金の対象になります。後に契約する方が何かと割増賃金を支払う確率は高いと感じますので、必要に応じて採用時に確認しておくとよいでしょう。
なお、時間外労働時間は、自社の36協定の表(上限時間)で管理しますが、副業先の時間外労働時間も把握しておく必要があります。なぜならば、過労死ラインでおなじみの、「時間外労働時間は、単月100時間未満、2か月~6か月平均で80時間未満とする」とは、個人単位で管理するものだからです。つまり、他社での時間外労働時間を含めるということですので、注意が必要です。
副業を認めるのは簡単ですが、労働時間の管理が非常に難しいところです。ある程度ルール(従業員からの報告ルール)を決め、極力バックオフィスの負担をかけず、準備を進めて頂ければと思います。