労務管理に役立つ知識#61 『年棒制の労務管理』プロフェッショナル採用をマスターしよう(渋谷・社労士・顧問・年棒制・労務アドバイザリー・コンサルティング)
2022/09/21
年棒制と聞いてどのような職業の方を思い浮かべますでしょうか。
多くの方が、プロスポーツ選手をイメージされたかと思います。
それゆえに、企業では『高額』で『プロフェッショナル』に『本人の裁量で仕事をする』一部の社員に適用されています。
例えば、ファンドマネージャーや大規模PM従事者、経営コンサルタントや外資系企業の部長職といったところでしょうか。
月給制と年棒制の最大の違いは、月給制の場合は年収が確定していない一方で、年棒制は契約開始時にすでに年収が確定しているということです。では年棒制を採用する者が長期休職に入った場合、その間の報酬支払いはどうなるのでしょうか。年棒制は契約開始時点で当該年収分を期限内に支払う(通常12分割)必要があります。果たして休職期間中も報酬支払義務が生じるのでしょうか。
その答えは契約内容によるものと考えますが、一般的に就業規則の定めにより控除可能です。
ここがプロスポーツ契約と労働契約の違いです。
労働基準法では、賃金の支払いに関し「全額払」の原則が定められており、賃金は全額支払わなくてはなりません。しかし、労働者自身の都合による欠勤、遅刻、早退に対して、その賃金を支払うか否かは当事者の取り決めによりますので、欠勤等には賃金を支払わないと就業規則等に定めた場合には、賃金債権そのものが生じないのであって、それは年俸制においても同じことです。
欠勤控除の計算方法については、特段の定めがあればそれに従うことになりますが、この特段の定めは労務の提供がなかった限度で定める必要があります。特段の定めがない場合は、欠勤1日につき、年俸額を年間所定労働日数で除して得た日額を控除するのが妥当な方法ですが、この際、賞与分を含めて算定するかどうかは取決めによりますので、就業規則(賃金規定)を整備することが必要です。
また、年棒制を適用しているからといって、残業代等の支払いを免れるといった年棒額以上の報酬を支払うことはないとする考えは誤りです。ゆえに、労働時間による適切な労務管理は行う必要がありますので、ご注意ください。