労務管理に役立つ知識#56 『フレックス勤務』コアタイム外に業務命令はできるのか?(渋谷・社労士・顧問・労務相談・フレックス・労務コンサルティング)
2022/09/11
東京都のテレワーク実施事業所は直近(令和4年4月)で約52%、コロナピーク時で約65%のため、若干オフィス回帰が進み始めたものの、依然として約半数の事業所でテレワークを実施しています。そしてテレワークに最も相性のよい働き方に、フレックス勤務があります。
フレックス勤務とは、1日の所定労働時間は定めず、月の総労働時間を定めておき、あとは始業終業の時刻は従業員の裁量に委ねるという勤務方法。自走できる従業員(=結果が出せる従業員)や小さなお子様や持病があって毎月通院を余儀なくされる従業員等にとりましては、個々にワークライフバランスに重きを置いた就業ができるため、大変喜ばれています。一方で、上長から指示がないと動けない従業員や監視が必要な従業員等は、さぼり癖を助長する恐れがあるので注意が必要です。
さて、そんなフレックス勤務。
コアタイムは当然指揮命令が及ぶものとして、それ以外の時間もしくはフルフレックス(全期間フレキシブルタイム)を採用している場合、会社は業務命令を行うことができるのでしょうか。
答えは”できます”
意見は2手にわかれますが、私は可能だと考えます。
なぜならば、フレックス制は、あくまで労働者に始業終業時刻の第一次的な選択権限を付与しているに過ぎないからです。通常業務に支障をきたすほどの有事があった場合、コアタイム以外だから業務命令が及ばないと割り切った考えでは、業務が成立しません。クライアントがいなければ会社運営そのものが成り立ちませんので、原則的な考え(フレックスの趣旨)をベースに、柔軟に適応させるべきかと考えます。
これを可能とするためには、労使協定に次のように明記します。
第〇条(業務命令)
『会社は、業務上必要性がある場合、勤務予定表に基づき、従業員に早出又は居残りを命じることがある』
ただし、この場合でも”労働者に始業終業の時刻の決定を委ねる”というフレックスの趣旨に照らし、頻繁にもしくは特定の日時に早出又は居残りを命じることは、権利の濫用として無効と解されるため、注意が必要です
”頻繁に”とは特に明らかにされていませんが、従業員が「多いな」と感じる程度に繰り返し発生する場合です。
”特定の日時”が明らかな場合は、コアタイムとして設定しておきましょう。コアタイムは日単位の時間だけでなく、細かく設定できます(例えば毎月第3水曜の15:00-17:00)。
以上を踏まえ、適切なフレックス管理をお願いいたします。