労務管理に役立つ知識#54 『問題社員予備軍への注意指導②』事例別注意指導方法(渋谷・社労士・顧問・労務相談・問題社員・労務アドバイザリー)
2022/09/03
今回は前回の続いて、問題社員予備軍を7つの事例別にピックアップし、それぞれどのようなアプローチが有効なのかをお伝えしたいと思います。
1.指示待ち社員
自分で考えて行動するのが大の苦手なタイプ。ゆえに何かと手がかかり、チームのお荷物になりやすい存在です。
「任せる」とか「自由にやって」等と言われるのが恐怖で、思考が停止し、精神的に参ってしまう可能性があります。
このようなタイプには「自分で考えて動く」ことを習慣化させることが重要です。まず仕事の8割程度を指示し、残りの2割程度を自分で決めさせてみましょう。そして、仕事が無事終わったら結果はどうであれ、盛大に褒めてあげてください。自分で考えてやりきったという成功体験を積み重ね、自分に自信をもってもらえるよう指導してみてください。
声掛け例:「この段取りで作業してみて。最後の仕上げをどうするかは君の意見を聞かせてくれないか?」「何かあればこのメモを見てやってみよう。書いてないところはまずは自分で考えてやってみよう!間違っても大丈夫だから。」
2.報連相しない(事後報告)社員
1人で仕事を勝手に決めてしまい、報連相を全くしないタイプ。仕事の進捗を周囲は一切知らされていないため、チームワークに支障をきたします。仕事ができる優秀な社員の場合はまだいいですが、未熟な社員が独断専行し、結果ミスって周囲が尻拭いをさせられては、ますます人間関係に軋轢が生まれます。
このようなタイプには「報連相の発想がない」ことが多く、習慣化されていないため、こちらから定期的な声掛けが必要です。「箇条書きの報連相を月曜の始業までに送ること」等ルール化するのも一つの手。報連相をしてきたら、労いの言葉をかけてあげるとやる気があがりますので、習慣化しやすくなるでしょう。ミスを報告してきたときこそが習慣化のチャンスです。報告してきたことをまずは労い、注意はそのあとに行いましょう。
声掛け例:「どんな状況?全体のどれだけ進んでる?」「報告ありがとう」「失敗の原因は何だと思う?」
3.小さな嘘をつく社員
都合が悪い時や面倒なことに巻き込まれないように、嘘をついてやり過ごそうとするタイプ。内容が「本当かも」と思うところもあり、言葉の抑揚や口調からも嘘と断定しずらく、上司としては仕事を振りづらく、手を焼きます。少人数チーム制の場合は、特定の者に面倒な仕事が集中しやすい状況になり、チームワークの悪化が懸念されます。
このようなタイプには、嘘をついたことに対する注意は最低限にとどめ「嘘をついた理由」を聞き出すことに時間を割きます。詳しく聞くと、「仕事上にトラブルを抱えている」というケースも散見します。例えば「電車遅延で遅刻した」という嘘の言い分の背景には「人間関係で悩んでいて会社に行くのがしんどい」という真実があったりします。問題を見つけ出し、解決にむけて相談にのってあげてみてください。ただし、「悪意のある嘘」に対しては「懲戒処分も辞さない」とする毅然とした態度で臨むことが必要です。
声掛け例:「何か悩みがあるんじゃないか?(→嘘をついた理由を教えてくれないか)」
4.新しい事から逃げる社員
「やったことがないので。。。」「私には無理です。●●さんの方が適任なのでは?」と消極的理由を並べて逃げるタイプ。いかにも恐縮そうな表情を見せることもあり、「う~ん、じゃあ別の人に頼んでみるよ」という気にさせられてしまいます。
このようなタイプには自信をつけてあげることが最優先です。「やってみたらできた」という小さな成功体験を積ませるのが近道です。まずは慣れている作業の中で、小さな挑戦をさせてみてください。例えば、仕事に一緒に取り組んでいる場合は、自分の担当の一部を任せてみます。相手は貴方の仕事を目の当たりにしているはずなので、取り組みやすいはず。うまくできたらハードルを少しずつあげていきましょう。
声掛け例:「今一緒にやっている仕事のこの部分からちょっと1人でやってみようか」
5.自意識過剰で周囲の助言に耳を貸さない社員
根拠なくとにかく自分の行動に絶対的の自信があるタイプ。このタイプはやたらプライドが高く人からアドバイスを受けることは稀なので、仕事のスキルを習得するスピードや成長は遅くなりがちです。
このようなタイプの指導は一筋縄ではいきません。ですのでショック療法で、自分の実力不足を痛感させるのも手かと思います。少し手に余る仕事を全面的に任せて、仕事の進め方などを本人に決めさせてみましょう。いずれ一人では立ち行かなくなりますので、助けを求めてきたときにそのSOSを肯定的にフィードバックしましょう。なお、進捗が著しく悪く、上司判断で仕事を中断する場合で、それでも「自分でやります」と言ってきたときは、「会社として君のプライドを優先するわけにはいかない、会社間の問題に発展する恐れがある」として巻き取ってください。巻き取ったからといってその者を仕事から外すのではなく、部下につけて、仕事の仕方を学ばせてあげてください。「身の丈を知る」「謙虚に学ぶことの大切さ」と「人に頼っても何も失うものがない」ことを実感してもらいましょう。
6.ちょっとの指摘ですぐ落ち込む社員
注意されると落ち込み、厳しく叱責するともはや立ち直れない(休職行き)タイプ。脆すぎて使い物になりません。
「叱責、注意、指導」は仕事の一部なので、周囲として言うべき時に言う必要があります。ですのでこの3要素に「努力を認める」を盛り込んでみてはどうでしょうか。努力を誉めるアプローチを盛り込んで、相手が受ける精神的ダメージを最大限に和らげてみてください。
声掛け例:「次からは気を付けて。でもこの部分はよく頑張ったな」
7.ミスを他人のせいにする社員
責任転嫁で自己防衛するタイプ。ミスや失敗を指摘されると、自分の不注意や実力不足を棚に上げて、他人や環境のせいにします。
改めるべき点があることに気づかせることが重要です。「人にせいにするな」と叱っても感情的になって聞き入れてもらえず逆効果です。「”もしも”改めるべき点があるとしたら、それは何だと思う?」と穏やかな口調で質問してみましょう。そうすれば、自分の至らなさに気付き、自身の弱さを受け入れやすくなります。この手法を用いて、少しずつ人のせいにする癖を減らしていきましょう。
声掛け例:「”もしも”改めるべき点があるとしたら、それは何だと思う?」
いかがでしたでしょうか。
身近にいる問題社員予備軍は上記の7タイプのどれかに該当しているのではないでしょうか。
すべてのタイプに共通して言えることですが、人の可能性を諦めてはいけません。目先の利益や周囲への影響度を鑑みて、つい「処分(排除)」に走りがちですが、排除したとしても、問題社員は社員がいる限りいずれ必ず現れます。一時はそれでよくても根本的な解決にはなりません。故に、会社は痛みを伴いますが、粘り強く当該社員を指導することと、人の可能性を信じ、地道に継続的に育成することを忘れないようにしましょう
問題社員予備軍の接し方、参考になりましたら幸いです。