労務管理に役立つ知識#42 『研修費用は投資?or浪費?』研修終了後即退職した社員から研修費用を回収できるのか(渋谷・社労士・顧問・労務相談・教育費・研修費)
2022/08/10
リカレント教育やリスキングという言葉をよく耳にする今日この頃、教育に投資をしたいという企業と、自分自身の価値を高めるためにスキルを身に着けたいと願う従業員が増えてきたように感じます。
そこで政府は企業を後押しするように、様々な助成金を支給しているのですが、まだまだ助成率(金額)が低い、CCCが長い、手続きが面倒など、色々と弊害やリスクがあります。最も大きなリスクとしては、せっかく研修した社員がすぐに退職してしまうことです。何十万もかけた社員がその能力を会社に還元せずに他社で発揮することなどあってはなりませんよね?故に企業側はそれなりの対策を講じる必要があります。
では次に対策とは何かを見ていきたいと思います。
対策としては大きく2つ。
1つ目は対象者の選定方法です
事前ヒアリングは必須です。キャリア面談と称し、社内で自身のキャリアをどうのように描いているかの確認と、会社側が当該能力を武装したことによって、どのような業務、職位に就いて、会社やチームの中でどのような役割を果たしてもらいたいのかを丁寧に説明する必要があると思います。要するに社員のキャリアに対する思いと会社の思いがマッチしているかの確認です。将来がイメージ出来ている社員の退職リスクは低いでしょう。なお、よく書面において「研修を受けた場合は一定期間の退職を禁ずる」とする約し事をするケースがありますが、本件は職業選択の自由を否定する行為であり、避けるべきだと感じます。
2つ目は金銭消費貸借契約書の発行
一定期間の退職を禁止する旨は約すことはできませんが、一定期間内に退職した場合は、研修費の全部または一部を返還する契約は合理的な事由があれば認められるべきでしょう。合理的な事由とは先に申し上げたような会社側の心情を斟酌して会社側でお決めになってください。例えば、1年未満の退職の場合、12か月以内で研修費の100%、12か月から18か月以内で研修費の50%、19か月以内以降はなし等です。ただし、書き方注意です!あらかじめ違約金や損害賠償の額を決めておくという点において、労働基準法16条の「賠償予定の禁止」に接触しますので、就業規則には当然明記できません。契約書でも然り。あくまで、会社が社員に対して『金銭を貸し付けた』という見せ方がポイントです。
書面には、資格取得の目的、費用貸与の趣旨、会社が費用負担する範囲、貸与限度額、貸与年数、返済方法、利息取り扱いなどを明確にし、労働を不当に拘束していないものであるよう規定しておくことをおすすめします。
会社の成長は人の成長に比例します。優秀な人材が会社を支えていることは言うまでもありません。
人材教育はどうしても金銭的リスクがつきものですが、リスクは0にすることは出来ず、いかに極小化出来るかが肝要です。上記を参考に、まずは対象者を厳選しスタートさせてみてはいかがでしょうか。