労務管理に役立つ知識#37 『社員教育と助成金』(渋谷・社労士・顧問・労務相談・教育・助成金)
2022/08/02
リカレント教育という言葉を聞いたことはありますか?
リカレントとは「繰り返す」「循環する」という意味で、リカレント教育とは、学校教育からいったん離れて社会に出た後も、それぞれの人の必要なタイミングで再び教育を受け、仕事と教育を繰り返すことを指します。
「なんでもっと学生の時勉強をしなかったんだろう」と悔やんだ経験はありませんか?
学校から一歩でれば競争社会が待ち構えています。能力は賃金に直結します。優秀な人材は明るい将来が約束され、そうでない人材は明るい将来が待つ入り口には立つことができても、出口を見つけることはできません。それが社会に出ることによって否が応でも気付かされるのです。
でもこのような危機感を早めに持つことは寧ろ正しい感覚。大学生であった期間などたかが数年。この先長い人生に比べたら大した時間ではありません。十分に取り戻せます。
また、企業でも自発的に能力を伸ばそうとする人材は重宝します。言われたことだけ忠実に行うだけなら機械で十分、それ以上の代えがたい何かを、各々の人間力(能力)がもたらします。
よって、企業は教育を必要投資と割り切ってある程度の予算を組んで実施しているところも増えてきました。
しかしながら中小企業ではなかなか予算を割くことは難しいのが実情。加えて、せっかく教育し能力を開花させたとしても、競業他社への採用でその能力を発揮されては元も子もありません。故にこの2点について、明確な対処方法を準備しておく必要があります。
まず教育予算の確保についてですが、本件は助成金で対処します。
能力開発系にかかる助成金の一例です。
※次回以降詳細を個別に取り上げます。
①人材開発支援助成金(特定・一般コース)
②人材開発支援助成金(人への投資促進コース)
③オンラインスキルアップ助成金
④中小企業人材スキルアップ支援事業
非接触型でも助成対象となる双方向型のオンライン研修が人気です。
能力開発者の流出についての対応策についてですが、資格取得費用を会社が一度「貸与」し、一定期間継続勤務する事により取得費用の返済を免除するという形で、社員と会社間で『金銭消費貸借契約』を締結する方法があります。社員は一定期間勤務すれば費用の返済が免除され、万一期間途中で退職した場合は、費用の一部を返済することとなります。
この方法を取る場合は、後日トラブルにならないよう、資格取得の目的、費用貸与の趣旨、会社が費用負担する範囲、貸与限度額、貸与年数、返済方法、利息取り扱い等を明確にし、労働を不当に拘束していないものであるよう規定しておくようにしましょう。
※間違っても「一定期間内に退職した場合は講座費用の全額を弁済する義務を負う」とはしないでください。あらかじめ違約金やその賠償額を決定するような取り扱いは労働基準法16条の「賠償予定の禁止」に抵触します。
あとはどこまでリスクを会社が許容できるかです。
教育にはリスクがつきものですが、それを上回る価値を会社が享受できることが多いのは確かです。そのためにはリスクを極小化することが肝要ですが、教育を受ける側もある程度の選定(会社が事前面接を行う)等の対策は必要だと感じます。
以上を踏まえ、社員教育の在り方をご検討いただけますと幸いです