労務管理に役立つ知識#25 『営業職と残業代②』(渋谷・社労士・労務相談・残業・営業・事業場外裁量労働制)
2022/06/12
『営業職と残業代①』の続きです。
お話させていただきました通り、原則残業代は労働時間に対する対価であるため、働いた分の賃金を支払うのが原則です。しかしながら、残業代を支払わない会社のなかには、『インセンティブを支払っているため、残業代は支払う必要はない』とする方がおられます
ここでインセンティブについておさらいです。
インセンティブとは動機付け要因のこと。いくつか種類があるのですが、一般的に物的インセンティブ”賃金=手当”だと思います。
単月、四半期、半期等の期間ごとの目標達成率に対し、定額(定率)支給する制度です。
主張の根拠は下記のとおりです。
「1日8時間の就業を超える時間分は、インセンティブを受給するための自発的な残業(持ち帰り残業)のため、会社は一切関与していない。
つまり、当該時間は、会社の指揮命令権を行使していない(=管理監督下に置いていない)ため、残業時間としてカウントする必要はない」というもの。
確かにこれが事実であるならば、差し支えないです。ただ、証明することが非常に難しいです。指揮命令をしていないというのは、直接的な指示だけではありません。黙示の指示も含まれます。通常業務とそれ以外のインセンティブにかかる業務とが明確であれば、インセンティブのための労働時間はカウントする必要はないでしょう。ただ、一般的に通常業務と混在してるのではないでしょうか。これは私の所感ですが、双方にかかった時間が把握できない場合は、通常業務の時間として管理しておいた方が後々を考えて(=あっせんや民事のこと)良いと感じます。
実務上は、インセンティブ額が非常に魅力的な金額の場合、通常業務の時間をインセンティブにかかる時間と仮定し、インセンティブ内で支払ってしまう方法があります。
※これが正しいかは何とも言えません。
即ち、優秀な営業マンは残業した分だけ結果を出してきます。たとえば、四半期の売上達成率120%として、インセンティブ50万としましょう。その50万の中で通常業務の時間とし支払うべき残業代があったのであれば、潜り込ませてしまうという方法です。従業員側は、頑張った分だけ評価してくれたという納得感が残りますので、まさにインセンティブ効果を与えることができます。
逆にインセンティブ額が低い場合は「こんなに頑張ったのにこれしかもらえなかった(もしくはもらえなかった)」という不服からトラブル(通常業務分の遡及請求)に発展する恐れがありますので、通常業務の時間として管理した時間分を支払った方が良いと感じます。
成果の出せない従業員に対しては、労働時間に対する賃金を支払なければなりません。それ以前に、そもそも成果があがらない従業員を、インセンティブの対象としていること自体が誤りですので、そのような従業員は、人事権を行使し(ただし正当な理由に限る。)配置転換を行い、営業職から外すことをお勧めします
あくまで営業職は結果を出してなんぼの職種。有能な従業員に自由裁量を認め、その自由の対価として会社に利益をもたらす。このような関係性であることが求められます。事前に営業職のミッションを伝えておくなどして、3年程度で目が出ないならば、インサイドセールス等の配置転換を検討してみてください