労務管理に役立つ知識#13 『改正キャリアアップ助成金』諦めるにはまだ早い!(渋谷・社労士・助成金・労務相談・コンサルティング)
2022/04/27
令和4年度助成金全般、明らかに要件が厳格化しましたね。
助成金の財源は保険料、今般の新型コロナウイルスにかかる雇用調整助成金(大盤振る舞い)で財源が枯渇した反動がここにきて現れたと読み取るのが一般的でしょう。
だからといって簡単に諦めてはいけない!!
アナウンス当初は”もう助成金申請を弊所のスコープから外そう”と考えていましたが、『正社員』という肩書は非正規社員にとりまして非常に大きな意味をもたらします。なぜなら、日本はそうは簡単に解雇ができない国だからです。
キャリアアップ助成金は、会社は幾ばくかの資金を、社員は正社員という安心を手に入れることができる、双方にメリットがあるわかりやすい助成金の一つ。人事にたずさわる方は是非本年も積極的に検討してほしいものです。
さて、本題に入ります。
今回の改正は大きく3点あります。この3点をきちんと理解し、クリアしておかなければなりません。
※10/1以降正社員転換する場合に限ります。
1.「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」のある正規雇用労働者であること
└正社員は賞与や退職金制度はあって然るべき。そして、会社の在籍年数に応じて社員は成長していくもの、即ち賃金も当然連動して上昇すべきである、という大手よりの要件ですね。
これだけ見ると制度を構築したり、支払いの実績を求められるのでは?と思われるかもわかりませんが、厚労省より下記のような例示がありました。
なるほど、『原則支払う』ことにして、後はあれこれ言い訳して支払わなくてもよいわけですか。どこが変わったのでしょうか。少々拍子抜けですね。
2.賃金の額または計算方法が「正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を受けていること
└要するに、契約社員用の就業規則を別に作成して、賃金の額(基本給や諸手当等の金額)と計算方法(賞与の支給方法等)が正社員のそれと比較して、労働条件が良くなったかを確認できればよいわけですね。
ここでポイントです。
短絡的に考えると”契約社員で賞与なし、正社員で賞与あり”とすれば良いように思われますが、『同一労働同一賃金』の考え方を忘れてはなりません。労働基準法に本項の定めはありませんが、規則上、このように支給基準のありなしを明確にするのは少々疑義が残ります。
※同一労働同一賃金についての概略はこちらより
よって、明文化するには少々頭をひねる必要がありそうです。
たとえば、『賞与は原則なしとする。ただし、職務の内容、責任の程度、配置転換の有無等を総合的に勘案し、正社員と同等の有期契約労働者はこの限りではない。』
役職手当の有無で対応する場合も同様の考えでよいでしょう。
※もしかしたら役職手当の方がわかりやすいかもしれませんね。マネジメント領域を正社員のみに課すことで、役職手当を正社員のみに支給するのは合理性があると思います。なぜなら、フルタイム契約社員は”業務の専門性”にフォーカスした採用であるため、管理職には不向きだからかです。もしくは、『有期契約労働者はリーダー職までとし、マネージャー職以上は正社員のみとする』このようにしても合理性が担保されるのではないでしょうか。
※上記条文は、現情報によるあくまで私の所感です。
3.契約期間にかかる規定を設けること
└有期契約労働者から正社員へ転換する場合、就業規則に契約期間にかかる規定がないときは、当該有期契約労働者は無期契約労働者とみなされ、受給金額が半減します。
たとえば、下記のように明記します。
(契約期間)
x条 有期契約労働者とは、専門的な業務に契約期間中従事する者をいい、原則契約期間は6か月とする。
2 契約期間満了時、職務遂行能力及び勤務状況(以下「勤務状況等」という。)が良好な場合は、以降6か月間の自動更新とする。
3 会社は、契約期間の合計が1年を超えた者を勤務状況等を理由に契約更新しない場合は、xx条(解雇)の規定を適用する
4・・・
※上記条文は、現情報によるあくまで私の所感です。
個別契約に準ずるという委任的な条文は本助成金に関しては認められないため、できるだけ雇用契約書の記載内容も明記しておいた方が無難といえるでしょう。
就業規則の変更でお困りの場合は、専門家に頼ることも一つの策。
使えるものは使いましょう。保険料を支払っている以上、使う権利があります。
バックオフィスは、専門家領域をも時にはカバーしなければならず大変だと思いますが、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです