労務管理に役立つ知識#1 永遠の問題、従業員が勝手に残業した割増賃金。払わないといけないの?(人事・労務)
2021/12/29
よくあるご質問の一つ
『従業員が勝手に行った残業時間分について、会社は割増賃金を支払わなければいけないのですか?』
使用者側は納得いかないですよね。。。
お電話ですとたいていお怒りモードです
このようなご質問には、残念ながら即答で”NO”とご回答はできません。
その一方で”Yes”とも言い難いのも事実です。
つまり、就業規則や日々の労務管理の実態、労働基準法や過去の判例法理を踏まえ、責任の量が使用者側、労働者側どちらが大きいのかを判断し、ご助言しています。
私が基本とする判断基準は3つ
・就業規則や労務管理上、残業するうえでの承認ルールの記載や実態があるのか
・残業者への仕事量(仕事と能力のバランス)は適切であったか
・日常から労働時間その他安全衛生上の管理を適切に行っていたか
加えて判例法理から判断基準として2つ
・黙示の指示があったか
・黙示の承認があったか
※どこかでTweetしますね
個人的な判断で恐縮ですが『一度はお支払いする』ことをお勧めしています。なぜならば、十中八九行き届いた労務管理ができていないからです。つまりは、本件を契機に大小さまざまな法令違反が発覚するでしょう。労働基準監督署は、当然に俯瞰的なアドバイス(→アドバイス後、本人に不服があるようなら労働審判の申し立ての案内)をするのですが、従業員情報(社名など)をヒアリングシートに残しますので、あまり企業にとって望ましいものではないでしょう。定期臨検の対象になるかもしれませんからね。
労働基準法上の大原則として、使用者は従業員の労働時間を適切に管理しなければなりません。この大前提に
”Yes”と回答できない限り、一度はお支払いしておいた方がよいでしょう。
また、『会社の指示ではなく、本人が勝手に残り残業をしている場合は、残業代を支払う必要がないのも事実』です。
最後にサマリします。
本ケースでは、リスクヘッジとして、一度は割増賃金のお支払いをし、その際対象者と今抱えている業務について話あってみてください。残業承認ルールをきちんと整備し、事後でも結構ですので『承認を得た時間分のみこれを認める』と就業規則に明記することをお勧めいたします