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(経営者向け)『人事労務の三大トラブル』解雇・残業代・ハラスメント対策の基礎【ハラスメント編】

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(経営者向け)『人事労務の三大トラブル』解雇・残業代・ハラスメント対策の基礎【ハラスメント編】

(経営者向け)『人事労務の三大トラブル』解雇・残業代・ハラスメント対策の基礎【ハラスメント編】

2021/10/18

近年増加傾向にあるトラブルがハラスメント。たとえ行為者が意図的ではなかったとしても、被害者本人の受け止めた方次第でハラスメントに認定されるケースが増えてきています。2022年4月からは、中小企業にもパワハラ防止法が適用され、社会全体でハラスメント撲滅に向け始動することとなりました。

そこで今回は3大ハラスメントとこれらに共通したアクションプランを整理したいと

目次

    3大ハラスメントのおさらい

    3大ハラスメントとは、セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、マタニティハラスメントをいいます。これらハラスメントについては厚生労働省から通達や労働法の定めにより、会社側がハラスメント防止にかかる周知・措置等*を講ずるよう義務化されていますので、会社側はきちんと対応しなければなりません。
    ※パワハラに関しては2022年4月から(ただし中小企業に限る)
    それぞれのハラスメントについては次のとおりです。
     

    セクシャルハラスメントとは

    雇用均等法では、下記2つの行為に該当する場合をセクハラ行為と定義づけています。

    ・職場で「性的な言動」をされ労働条件について不利益を被る行為
    ・職場の「性的な言動」により就業環境が害される行為

    性的な言動とは、一言で言い切ることは難しいのですが、一般的には”性的な内容の発言”と”性的な行動”に大別できます。
    それぞれの内容についてはご想像の通りで割愛しますが、勘違いが起こりやすい性的な言動もございますので参考にしてみてください。
     

    これも性的な言動に含まれます!

    ①接待や社員旅行で女性社員の出席を執拗に求めたり、お酒をつがせたりすること

    ②職場内にて女性社員が給湯室や女子トイレ、男性社員の前などで特定の社員の容姿、恋愛関係、恋人に関する噂話をすること

    ③外見的特徴がある社員のファッションセンス、身体的特徴について話すこと

    ④恋愛経験等をしつこく聞くこと

    ⑤結婚に関しての話を聞くこと

    ⑥女性社員に出産に関しての話を聞くこと

    ⑦男性社員に「男のくせに」という言葉をかけること

    ※一部行為者が片方の異性として明記しておりますが、原則両性になりえます。
     

    パワーハラスメントとは

    パワハラとは、職場内での立場上優位な者(上司)が、社員(部下)に対して業務の適正範囲を超えた叱責や嫌がらせを行う行為をいいます。殴る蹴る、掴みかかる、威圧するなどわかりやすいものはいかなる理由があろうと禁止されていますが、こちらもセクハラ同様、意外な行為が該当するケースもありますので注意しましょう。

    パワハラは大きく6つに大別できます。

    1.身体的攻撃
    2.精神的攻撃
    3.過大要求
    4.過少要求
    5.人間関係の切り離し
    6.個の侵害

    一般的に1.2はわかりやすいと思います。直接的な攻撃(口撃)ですね。問題となるのは3~6です。6の個の侵害についてはコミュニケーション力が高い人ほど得てして行い、結果自身の評価を下げてしまうケースがあります。

    今回は、勘違いが起こりやすいパワハラ行為として、”過大要求”と”人間関係の切り離し”に接触する行為を中心に、事例としてまとめてみました。
     

    これもパワハラ行為に該当します!

    【過大要求】

    ①恒常的に仕事量が多く、今日も残業確定のAさん。そんな上司が定時直前に、さも当然のように、誰がみても深夜までかかるほどの業務を押しつけてきた。当の上司は定時で帰宅。

    ②新人でまだ仕事を覚えきれていないBさん。上司が入社数年レベルの人と同じ内容の仕事を押し付けてくる。結果、Bさんは仕事をうまくこなせず怒られた。

    ③事務職のCさんは総務、経理、人事にかかる多くの業務を一人でやらされていました。さすがに身体が持たないと感じたCさんは人手不足を訴えたものの、上司は正当な理由なく却下した。

    ④生活がカツカツのDさん。経営側はそのことを把握しており、仕事を辞められないのをいいことにDさんへきつい仕事を優先的に押し付けた。

    ⑤真面目に仕事に取り組むものの、なかなかミスが減らないEさん。そんなEさんに対し、上司はちょっとしたミスでもその都度、膨大な量の反省文を書かせた。

    【人間関係の切り離し】

    ⑥上司の怒りを買ってしまったFさん。一人だけデスクを離され、さらに忘年会や新年会に誘われなくなってしまった。

    ⑦会議の時、Gさんは自分にだけ資料がまわってこなかったため、資料を貰いに行きましたが上司はそれを無視。その後Gさんだけ資料が無い状態で会議は進行した。

    ⑧ある仕事のミスをきっかけに、Hさんは今まで仲の良かった同僚も含め職場の全員に無視される事態になった。仕事が終わってから同僚に何度か話しかけたところ「上司からお前と話さないように言われてる」と伝えられた。

    ⑨仕事でミスをしてしまい、会社に損害を与えてしまったIさん。それを機に上司から部署の定例会議に出席しなくていいと言われてしまった。部署内でも孤立状態になってしまった。

    【番外編(個の侵害)】

    ⑩新入社員のJさんは、配属された部署の上司に「SNSやってないの?」と聞かれ、嘘をつくのも申し訳ないと思い、仕方なく「やっています」と答えた。するとすぐに上司から友達申請が。当然にこれを拒否するわけにはいかず、承認すると、それからというものSNSに投稿した内容について頻繁にメッセージを送ってくるようになり、SNSの利用を躊躇するようになった
     

    マタニティハラスメントとは

    マタハラとは、発言者の意図に関係なく相手に不快な思いをさせたり、尊厳を傷付けたりすること全般を言い、明確な定めはありません。ただし、雇用均等法第9条に『女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならないことや、休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない』と記載のあることから、その判断には気をつけなければなりません。

    下記に代表的な裁判事例を取り上げます。参考にしてみてください。
     

    マタハラ裁判事例

    ①今川学園木の実幼稚園教諭解雇事件

    【概要】
    私立幼稚園の教諭として勤務していた女性が、妊娠したことを園長に報告したところ、中絶の勧告や退職勧奨を受けて解雇された。女性の妊娠相手が内縁の夫とのできた子供だったこともあり、園長は女性に対して「結婚もしていないのに妊娠するなんて」、「私が親ならひっばたいている」などの言動を行った。また、女性は切迫流産、子宮頚管ポリープと診断されたため入院する必要があり、女性は医師より絶対安静を言い渡されていたが、同園より出勤の要請があったためやむを得ず出勤し、その後流産した。
    同園ではこれまでの経緯、また、女性の普段の業務態度などを理由に女性を解雇した。女性は同園と園長に対し未払いの賃金の請求と損害賠償請求を行った。

    【判決】
    同園及び園長が行なった一連の言動は男女雇用機会均等法9条に違反する違法行為。よって、同園及び園長が行なった言動はマタハラとみなし、女性の解雇は無効とされた。また、請求された損害賠償については支払いが命じられた。

    ②大日本印刷事件

    【概要】
    印刷会社に内定していた女子大学生が、内定期間中に妊娠していることが判明したことを理由に、内定を取り消された。
    同社は内定の取り消しの理由を「グルーミー(陰鬱)な印象であったため」としているが、内定の取り消しは妊娠を契機としたものと考えられた。そのため、女子大学生は同社に対して内定取り消しの撤回と損害賠償請求を行った。

    【判決】
    同社が行った内定取消しは、女子大学生の妊娠を契機としたものとみなされ、内定の取消しは労働契約法16条による解約権の濫用であるとされた。また、同社が内定取り消しの理由としてあげていた「グルーミー(陰鬱)な印象であったため」というものは客観的な合理性を欠いた理由であるため労働契約の解約理由にはならないと判断された。このことから女子大学生の内定取り消しは撤回され、未払い賃金及び慰謝料の請求が認められた。

    会社側にとって②の判決は覚えておいた方がよいでしょう。採用時に女性社員が妊娠を意図的に報告しなかったにせよ、就業規則に内定時の条件に妊娠していないことと明記があったにせよ、法律上、当該女性社員を妊娠を理由に解雇できません。(内定取り消しも解雇に該当します)

    このようなケースでは、育児休業が会社によっては取得できない場合があります。就業規則を確認し、取得不可のときは、給与のお支払いがないこと、子供が最も大変な時期で仕事もこれから覚えなければならないときに、仕事と育児の両立ができるのか雇用の継続という選択が果たして正しいのか、労使間で真剣に話あう必要があると思います。状況に応じて本人の配偶者、両親と話し合うことを提案し、改めて、ご自身が本当に働いていけそうか、働きたい・働く必要があるのであれば「どう状況を整えて対応していくか」考えてみましょう。

    会社が取るべき3大アクション

    ハラスメントにかかる一連の内容を認識いただいたうえで、最後に三大ハラスメントに共通する会社がとるべき3大アクションでまとめます。
     

    アクション1.トップメッセージ

    社員へのメッセージは、内容の質よりも誰が発信するかが重要です。会社への思いが最も強い方はどなたでしょうか。社員のことを心の底から気に掛けなければならない方はどなたでしょうか。社長ですよね。中小企業の場合は影響力が最も強い社長が適任です。なぜなら社長その者に惹かれて入社を決意された社員が多いからです。同じメッセージでも誰が発信するかで社員は耳を傾けます。原稿のありなしはともかく、トップメッセージが最も効果的な方法です。
     

    アクション2.継続的な教育

    ハラスメントについての社員教育は、継続していかなければなりません。例えば、IT企業で毎年実施しているセキュリティ研修、なぜハラスメント研修がないのでしょうか。対外的な影響が前者にはあり、後者にはあまりないからが理由かもわかりませんが、昨今一事業所に様々な会社の人間が集まるゆえに、対外的な影響もそれなりに高くなってきたと言えるでしょう。またハラスメントは82種類あるという記事もありますので、特に職位上優位にある管理職者の方におかれましては、毎年定期的にアップデートをお願いしたいところです。
     

    アクション3.相談窓口の存在意義

    ハラスメント防止措置の一環で相談窓口を設置することになりました。しかしながらその窓口、形骸化していませんか?
    万が一社内でハラスメント事案が発生し、相談窓口を設置していたとしても、存在を知らない、存在を知りつつも何をしてくれるかわからない、相談先が頼りないなど相談する側が相談をためらうようでは、窓口を設置した意味がありません。
    会社は相談窓口の存在意義(どんな相談にも応じ厳粛に対応する体制が万全であること)を示すべきです。このような専門的事案を社内で治めることは困難であることから、顧問弁護士、顧問社労士、産業医、労働衛生コンサルタントなどの名称を周知文書内で記載するだけでも、行為者にとって一定の抑止になると思います。(記載の際は個別承諾は必要)

    あわせて、相談後の行為者、被害者への対応フローまで明らかにしておけば、相談窓口の信頼性や透明性は担保されるのではないでしょうか。

    まとめ

    ハラスメントは年々増加しております。法改正でどこまで取締りの効果があるかは、それ自体に罰則規定がないのでいささか疑問です。ですが、それをいいことに軽視していると、一歩間違えば重犯罪行為になりかねません。実際にハラスメント行為と認定された根本的な要因は、職場内で日常的に行われているささいな言動が起因だったりします。挨拶代わりの接触行為、休憩中のさりげない雑談、指導助言、連休直前直後の予実確認・・・ハラスメントは様々なところに潜んでいます。

    行為者となりうる職位上優位にある管理職者は、何よりも日常の言動を意識すること、継続的な教育によりハラスメント行為の適正判断を行えるようになること
    被害者となりうる者は、1人悩まず相談窓口に相談すること


    ハラスメントゼロの社会の実現に向け、一つ一つ取り組んでいきましょう。

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