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(経営者向け)『人事労務の三大トラブル』解雇・残業代・ハラスメント対策の基礎【残業代編】

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(経営者向け)『人事労務の三大トラブル』解雇・残業代・ハラスメント対策の基礎【残業代編】

(経営者向け)『人事労務の三大トラブル』解雇・残業代・ハラスメント対策の基礎【残業代編】

2021/10/18

三大トラブル(解雇・残業・ハラスメント)はどこの企業でも実在します。経営者の誤った解釈と杜撰な労務管理で不当に残業代を支払わないケースが未だに散見します。

経営者は社員に対し、日々の出退勤時間を管理し、実働に応じた給料を支払う義務があります。もしもその義務を怠った場合、どうなるのでしょうか。今回は経営者側の残業代未払いリスクについてお話しさせていただきます。 

目次

    基本的な考え方

    残業代、すなわち割増賃金はどの時間帯から発生するかご存じですか?
    一般的に法定労働時間を超えたときから発生します。

    では法定労働時間とは何でしょうか。
    一定の業種を除けば、法律上1日8時間、週40時間と定められています。

    つまり、残業代の基礎となる労働時間は、特別な働き方(変形労働制、フレックスタイム労働制)を採用していなけば、上記の時間を超えた時間、休日に働いた時間、深夜(22:00‐翌5:00)に働いた時間になります。残業代は、こちらの労働時間に対象者の時給、会社ごとに定めた割増賃金率を掛けて算出します。

    以前の投稿で解説のとおり、残業代金を圧縮させることは可能ですが、支払いが免除されるわけではありませんので、まずお心当たりがある場合は、賃金規程の見直しと、大事になる前に、速やかにお支払いいただくことをお勧めします。

    なお、次に該当する者は残業代支払い義務はありません。
     

    支払い義務のない社員とは

    労働基準法41条に次の記載があります。

    『この章,第6章及び第6章の2で定める労働時間,休憩及び休日に関する規定は,次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

    ① 別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者

    ② 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

    ③ 監視又は断続的労働に従事する者で,使用者が行政官庁の許可を受けたもの』

    これに該当すれば法律上の労働時間(残業時間)の考え方は適用しなくてよいということになります。

    ですので、会社側はこれを誤認し、管理の地位にある者=プロジェクトリーダー、店長、工場長などの肩書を与え、長時間拘束、残業代を不払いとすることが往々にして起こってしまうのです。

    管理職者と管理監督者はまったくの別物ですので、今一度きちんと整理したいと思います。
     

    管理職者と管理監督者の違い

    管理職とは会社が認めた役職者のことです。つまりは法律上の定義はありません。リーダー、主任、チーフ、マネージャー、課長、部長の名称を問わず、会社が管理職の定義をし、能力を有しとその職責を全うできると認めた者ならどなたでもなれます。

    その一方で、管理監督者とは法律上定義されています。
    次の要件のすべてに合致していない者は、管理監督者として認められませんので覚えておきましょう。

    ①極めて重要な職務内容であること。
    『労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあり、労働時間等の規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していなければ、管理監督者とは言えません。』
    (参考:厚生労働省『労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために』)

    ②重要な責任と権限を有していること
    『労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあるというためには、経営者から重要な責任と権限を委ねられている必要があります。
    「課長」「リーダー」といった肩書があっても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事項について上司に決裁を仰ぐ必要があったり、上司の命令を部下に伝達したりするに過ぎないような者は、管理監督者とは言えません。』
    (参考:厚生労働省『労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために』)

    ③勤務形態が柔軟であること
    『管理監督者は、時を選ばず経営上の判断や対応が要請され、労務管理においても一般労働者と異なる立場にある必要があります。労働時間について厳格な管理をされているような場合は、管理監督者とは言えません。』
    (参考:厚生労働省『労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために』)

    ④その地位にふさわしい待遇・賃金が支払われていること
    『管理監督者は、その職務の重要性から、定期給与、賞与、その他の待遇において、一般労働者と比較して相応の待遇がなされていなければなりません。』
    (参考:厚生労働省『労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために』)

    いかがでしょうか。

    一事業所に1人該当するかしないかの、かなり厳しい条件であるということをお分かりいただけたかと思います。

    過去の判例法理

    残業代未払い問題は、過去の判例にもございます。ここでは代表的な判例を4つ取り上げたいと思います。

    結論から申し上げますと、労働時刻を過少申告させたこと、労働時間の管理を怠ったこと、実態として残業をさせていることなど、客観的にみて事実である可能性が高い場合は、労働時間と容認される傾向が高く、結果残業代を支払うこととなることが多いようです。

    そうならないためにも、日頃よりきちんと社員の労働時間を管理することが大事ということになりますね。
    (それが一番難しいんだよ!そのやり方を教えてくれよ!という声が聞こえてきそうですが、それは顧問社労士としての腕の見せ所でございます。)
     

    日本コンベンションサービス事件(大阪高判平成12/6/30)

    【概要】
    会社が、残業代を請求してきた社員の一部に対し、タイムカードを打刻させなかった事案における残業代の算定について、社員が会社を提訴した

    【判決】
    原告の主張する時間外労働の半分につき、残業代請求を認容する

    【理由】
    時間外労働時間は変動するものであり、個人差もあるからその推計は容易ではない。しかし第一審原告らが主張している労働時間・・・の2分の1の時間外労働にも従事していないなどということは、・・・他の第一審原告らの労働状況に照らしても考えられないため、現況を踏まえ総合的に判断し確実な「2分の1」とする
     

    丸栄西野事件(大阪地判平成20/1/11)

    【概要】
    会社側の主張(タイムカードに打刻された時刻は、実働以外の私的な時間や休憩時間が含まれており、会社側が残業の命令をした事実もないため、当該残業代を支払わないこととした)に不服を抱いた社員が、会社を提訴した

    【判決】
    タイムカードの記録に基づいて、労働時間(時間外労働含め)を算定するように命ずる

    【理由】
    被告は、原告の実働時間がタイムカード記載のそれよりも少ないと主張するが、可能性の指摘をするにとどまるもので、喫茶店での休憩や業務外でのインターネットの使用等を裏付ける証拠は見当たらないなどを実証がないため、そのすべてを労働時間と容認せざるを得ない
     

    京都銀行事件(大阪公判平成13/6/28)

    【概要】
    定時は18:00だが、実態として19:00までは社員の大半が業務を継続している。社員は運営上必要な行為として残業代支払いを要求する一方で、会社は所定時間終了後業務命令はしておらず、あくまで社員が自主的に業務を継続したことから支払いを拒否するという主張に不服を抱いた社員が、会社を提訴した

    【判決】
    明示の事実がなくても事実確認から認め得るにたる黙示の指示があったと認定し、残業代支払いを命ずる

    【理由】
    紫野支店において、多数の男子行員が午後7時以降も業務に従事していたこと、このような実態は被控訴人の支店において特殊なものではなかったこと、紫野支店では勤務終了予定時間を記載した予定表が作成されていたことなどからすると、・・・少なくとも午後7時までの勤務は、被控訴人の黙示の指示による労働と評価でき、原則時間外労働に該当する

    ★ポイント 社員は当日の勤務終了予定時刻を午後7時と事前に申請していた(承認がなかったとしても、事前に業務をすることがわかっていたということは、残業をさせない理由がそこにあれば、帰宅を命ずることも可能であった。つまり、会社側の管理監督責任をついた事案)
     

    NTT西日本事件(大阪公判平成22/11/19)

    【概要】
    自社の製品を家族友人に勧める「全社員販売」に要した時間、および業務関連知識を保管するうえでの「WEB学習時間」を労働時間として含めないのは不服として、社員が会社へ提訴

    【判決】
    労働時間として認容できない

    【理由】
    前者については、作業時間、場所、方法が社員が任意にこれを決定できるものであること、後者については、会社が利潤を得るための行為ではなく、各社員がその自主的な意思によって作業することでスキルアップを図るものであること、といった事実を挙げ、いずれもその労働時間性を否定している。

    まとめ

    残業にかかる裁判は、社員側に優位であることは言うまでもありません。裁判で判決後に未払い残業代金を支払うこととなった場合、会社は裁判所命令で付加金(支払い金額と同額)も支払う必要があります。

    付加金の規定は労働基準法に下記のとおり記載があります。
    『裁判所は、第20条(解雇の予告)、第26条(休業手当)若しくは第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)の規定に違反した使用者又は第39条9項(年休手当の計算)の規定による賃金を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあった時から5年以内にしなければならない。』

    とにかく会社側にしてみれば、負けるうえに支払う金額が倍に増える、百害あって一利なしですね。

    ならば、どうするか。

    最初っから法律に準じた労務管理を行えばよいだけです。従業員が自社を誇れる、もっと働きたい、誰かに自慢したいと思える会社ほど、数字に表れるのではないでしょうか。従業員の働く姿や言動にフォーカスし、今よりも社員を意識してみてください。

    いずれ残業代金よりもはるかに大きな利益を享受できるかもわかりません。

    まずはできるところからで結構です。労働管理にトライしてみましょう。

    なお、ブログでは掛けないことも多数ございます。そうは言っても労務なんてわからない、結局どうすればいいの?とお困りの際は、オンラインでご相談をお受けいたします。

    よろしければお気軽に無料コンサルティングを受けてみてくださいね。

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