労務管理に役立つ知識#45 『固定残業代導入メリット・デメリット』勤怠管理がポイント(渋谷・社労士・顧問・労務相談・勤怠管理・労務アドバイザリー)
2022/08/14
固定残業代とは、会社が一定時間の残業をあらかじめ契約書に定め、その定めた時間分の残業代を給料に含めて労働者に支払う金額のことを言います。よく「固定残業代を導入している会社はブラック企業だ!」とネットに取り上げられたりもしてますが、必ずしも固定残業=悪であるというわけではありません。採用にはメリット・デメリットがありますので、今回はこのあたりをお伝えしたいと思います。
まずはメリット
①給与計算がしやすい
まずはこれ。会社の平均残業時間が10時間程度ならば、10時間の固定残業代を採用すれば大部分の残業計算をカット(目検程度で済む)できそうです。20時間の固定残業代を採用すれば、毎月面倒な残業代計算とはおさらばできます。
②社員のモチベーションとなる
社員一人一人が、日々きちんと業務管理をすることで、固定残業代はそっくりそのまま給与になります。定時で業務を終えられるよう、効率的に業務を行う社員が増えていくことが予想されます。
一方でデメリット
①採用に弱い
転職組は固定残業代あり=過重労働のイメージが定着しているため、エントリー者数が想定よりも下回る可能性があります。特に月の法定労働時間付近で設定している企業は、かなり警戒される傾向にあります。
②余計にコストがかかる
部署や業務内容により、ノー残業の部署・チームがあると思いますが、そのような社員が全体の過半数を占める場合、通常通り給与計算(人事側の残業を容認)した方が、経費削減には効果的と言えるでしょう。
なお、固定残業代を採用するときは、月の総支給額を意図的に低く見せる(低く設定する)ことだけはしないようご注意ください。例えば月給250,000円、固定残業50,000円(40h分)と月給250,000円(固定残業40hを含む)とではえらい違いです。よく後者の書き方を採用しており、後々計算してみると最低賃金を下回る(法違反)ケースも散見します。社員に誤認・誤解・疑念を抱かせる給与設計だけはお控えください
固定残業代を採用には、まず社員一人一人の勤怠を正確に把握することをお勧めします。直近3年程度の残業時間と今後3か年の事業計画から、どの部署がどの程度業務増が見込まれるのか、様々な角度からシミュレートしてみましょう。個人、部署、役職等により固定残業時間を設定することも出来ます。ただし、あまり複雑にしてしまいますと、メリット①が相殺されてしまいますので、このあたりのバランスを重視して、ぜひご検討頂ければと存じます。