労務管理に役立つ知識#44 『夏と匂いとハラスメント』スメルハラスメントとは?(渋谷・社労士・顧問・労務相談・スメハラ・研修・労務アドバイザリー)
2022/08/13
スメルハラスメント(以下「スメハラ」という。)とは、本人は悪気がなくとも、一部の社員が発する「匂い」が原因で、自身のパフォーマンスの低下や体調悪化を引き起こす行為を指します。さて、このスメハラですが、安易に「嫌がらせ」の類にカテゴライズしていいのでしょうか。なぜならハラスメント=「嫌がらせ」とは、本来、対象者を意図的に傷つけたり、相手が嫌がることを行うことですが、スメハラの行為者は、周囲の者を傷つけていることに無自覚であることが大半です。また、例えば匂いの原因が”先天性””家庭環境””持病”などデリケートな部分が関与していたりするので、対象者の自尊心を傷つけることなく対応をすることを余儀なくされます。
人事を長くやっていると、次のような相談を受けることがしばしばあります。
「●●さんの体臭がきつくて仕事になりません!」
「〇〇さんの香水がきつくて集中できません!」
「△△さんの口臭がきつくて報連相ができません!」など
さて、このような相談を受けたとき、あなたはどのような対策を行いますか?
いくつか具体策をあげてみましょう。
①マスクと換気
コロナ対策でマスクと換気はスタンダードなものになってきておりますので、コロナが収まっても社内ルールとして継続していくのもよいでしょう。特にマスクで活性炭のものは、口臭を抑える効果もありますのでおすすめです。対象者が自覚せずとも匂いから身を守る防護策として、対象者以外の者は自主的にマスクを活用しましょう。
②研修の実施
パワハラやセクハラ同様、スメハラも必要に応じて研修を行うべきかと思います。本人が「スメハラを行っている」と自覚すれば、問題が自然に解消されるケースは少なくありません。まず会社は、本人が臭いに気付く機会を提供しましょう。なお、
臭いに悩む社員を放置しないことが大切です。研修では、「スメハラの相談窓口はここです」と明確に提示し、トラブルが小さいうちに対処できるようにしておきましょう。考え方は3大ハラスメントと同じです。さすがに行為者に懲戒とまではいきませんが、相談窓口は設置しておきましょう。
③全社的なイベントを実施
毎年〇月を『匂いについて考える月』とし、様々な匂い対策(例えばリステリン、マスク、ガム、bodyタオルなど)と簡単なスメハラについてのリーフレットを作成・社員の自宅へ送付し、各自に、自分の匂いと周囲に与える影響について意識・検討してもらえるようなイベントを計画してもいいでしょう。その中で、本当に気付いてもらいたい社員には「体臭評価キット」を送付し、民間機関にきちんとデータで示してもらいましょう。
④医師へ診察
原因が病気である可能性も否定できません。産業医と契約している企業の場合は、産業医面談を実施し、医師(第三者)から医学的見地に基づいたアドバイスと、本人が自覚してもらえるよう依頼してみるのもよいでしょう。
⑤直接連絡
周知等で改善されない場合は、対象者へ直接連絡しましょう。ただし、あくまで就業規則の服務規定やアピアランス(ビジネスマナー)に問題があるとして、人事が1on1で行いましょう。方向性がずれたり、語気が強くなると、パワハラやセクハラで訴えられる可能性があるので注意が必要です。
ただし、あまりに本人への配慮をし過ぎて、核心を伝えられなければ直接連絡をした意味がありません。ビジネス上、他の社員や他部署の社員などと協力して仕事をするなかで、みんなが気持ちよく働けるよう、やれることはすべてやってもらえるように訴えてみましょう。例えば、その人のスメハラの原因が体臭なら、朝のシャワーを進めたり、隅々までよく体を洗ったりすることを提案します。
スメハラの大部分が体臭(口臭を含む。)です。匂いには定義がなく、感じ方も人それぞれなので、安易な判断でその人の匂いを否定することはできません(モラルハラスメント)。しかしながら、社員には職場環境維持義務を有しており、会社は安衛法により快適な職場環境を形成しなければなりません。それゆえに、見て見ぬふりをすることは許されません。
上記を参考に、貴社なりのスメハラ対策を検討してみてくださいね。