労務管理に役立つ知識#43 『出来高制(歩合給)採用時のポイント』ジョブ型雇用と出来高制(渋谷・社労士・顧問・労務相談・出来高制・給与コンサルティング)
2022/08/12
企業のなかでは、固定給に代えて、売上高、販売個数、契約件数、受注金額…などの”出来高”で給与を支払いたいと考えていらっしゃる方が増えてきました。
理由は色々考えられますが、一つに平等性の観点が挙げられます。
同時期に営業職で入社したAとB。明らかにAがBよりも毎月の取引件数、受注金額が上回っていたとしても、固定給が同じならば毎月の給与は同じ。Aとしては当然納得できないでしょう。この”能力差”を賃金に反映するには、半期に1度の”賞与”や年に1度の”定昇”だったりするわけですが、CCC(キャッシュコンバージョンサイクル)としてはかなり遅いと感じます。そこまでAのモチベーションが保つかどうか甚だ疑問です。企業としては、優秀な社員は最短で評価することを癖付けし、高いモチベーションを維持できるような措置を、早急にとるべきかと存じます。
その措置の代表格が「出来高制」です。歩合給、成果給、インセンティブ制など名称は様々です。
この出来高制を採用するには、労働基準法に照らし合わせて採用する必要があります。
労働基準法27条『出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。』
これは『完全歩合給をしてはならない』ことを意味しています。
その真意はまさに今般のウクライナ情勢や新型コロナウイルスなどの外部要因により、客不足や原料不足、あるいは工場の停止、取引先や業界のシュリンクなど労働者の責に帰すことができない理由により業務量が激減し、結果、賃金が著しく低下するのを防止するためです。
いくらモチベーションが高く能力があろうとも、それは平常時での話であって、社会的要因が極めて強い場合はこの限りではありません。
そこで法律上、『労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない』と明記しています。
曖昧な表現ですよね。。。
結局保証額はいくらなんだと
労働基準法では、保障額についての規定はありませんが、休業手当が平均賃金の6割以上の支払を要求していることから考えれば、労働者が現実に就業している部分につき、平均賃金の6割程度がひとつの目安と考えるのが一般的です。
※過去の通達でも似たような内容で「6割」とする旨、発出されています。
ただし、最低保証を計算する際、平均賃金の6割程度で良いとだけ覚えているとうっかり「最低賃金」を下回る可能性がありますので、重々注意してください。
出来高制をとるからには、歩合部分を魅力的な賃金に設定することを忘れないでください。
エビで鯛が釣れるように、会社もまたそこそこ利益が確保できるような数字をご検討ください。なお、歩合欲しさに残業増になっては元も子もありませんので、タイムマネジメントが出来る者、自走出来る者、会社の意図を理解出来る者など、対象者を限定するとよいですね。個人成績だけでなく、部署目標など部下への教育も兼ねて行うとより効果的です。
貴社にあった出来高制をぜひ検討してみてください