労務管理に役立つ知識#22 経費の水増し請求!?懲戒解雇できるのか(渋谷・社労士・労務相談・懲戒・解雇・コンサルティング)
2022/05/27
事業を拡大するうえで、従業員の力は絶対です。
しかしながら、人間は少しの気の緩みで法を犯してしまいがちの弱い生き物であること事業主は認識しておく必要があります。
就業規則の定めていたとしても、ひょんなことから規律違反をしてしまうこともあるでしょう。
故に、会社のルールを犯してしまった従業員には、会社が丁寧に事実確認したうえで正しい処分を与え、気持ち改めて再出発してもらうための「指導」をすることが大切です。
怒りに身を任せて、懲戒処分の中で最も重い懲戒解雇ができないかのご相談を頂くこともありますが、上記を踏まえ慎重に判断しなければなりません。
この場合の”判断”とは、今回の非違行為を整理し、過去の判例法理に照らしあわせて、本件が「懲戒解雇の処分にたる客観的合理的な理由があるのか」の視点でみていきます。
経費の水増し、言わば、故意に必要以上の金員を計上し、その金員を不正に着服した。もしくは業務上無関係の財の購入、サービスを享受した。
下記、判断する際のプロセス(例示)です。
①『不正利得』の判断基準を確認する。
・被害金額
・悪質性(再犯性)
・故意or過失
・役職(不正しやすい立場だったか)
・会社のチェック体制
・動機
・返還の意図
②事実確認を上記の基準に従い進めていく。
③過去の判例法理から類似している裁判例を探す。
④懲戒解雇の妥当性有効性を懲罰委員会で判断する。
└有効性妥当性がなければ、相応の処分(譴責~出勤停止)を検討します。
懲戒解雇をするうえでは、懲戒上最も重い処分であるため、労働者の責めに帰すべき事由として、労働基準監督署の認定を受ける必要があります。具体的にいうと、会社側は、懲戒解雇に至った経緯や根拠(主義主張)を定量的に端的に記した「解雇予告除外認定書」という書面を提出しなければなりません。また、対象者へ労働基準監督署側から、その記載内容に相違ないか、確認のため連絡があります。ですので、事実確認においても高圧的かつ断定的な確認方法では、「自白を強要された」として認められない可能性があるため、重々注意してください。